瀧口修造〜妖精の距離〜鈴木輝昭 [鈴木輝昭氏]
今年の朝日コンクール全国大会高校B部門において、福島県立安積黎明高校合唱団が、金賞並びに文部科学大臣賞[第1位]を受賞した。
30年連続金賞受賞という快挙、文部科学大臣奨励賞も5年ぶり(前回:平成16年/2004年)に受賞。
凄すぎる! 恐るべし! の感想に尽きる。
[wikipedia から抜粋]
1980年から2008年の29年連続(継続中)で金賞を受賞
そのうち第1位の合唱団に与えられる文部科学大臣奨励賞を通算22回受賞
▼課題曲:女声合唱組曲《遙かな歩み》から「機織る星」
詩:村上博子 曲:高田三郎
指揮:星英一 ピアノ:鈴木あずさ
▼自由曲:女声合唱とピアノのための組曲《妖精の距離》から「妖精の距離」
詩:瀧口修造 曲:鈴木輝昭
指揮:星英一 ピアノ:鈴木あずさ
コンクールを鑑賞していないが、音源を入手することができた。
[ 作曲家 ⇔ 指揮者 ⇔ 演奏者 ]
[ 鈴木輝昭氏 ⇔ 菅野正美氏/星英一氏 ⇔ 安積女子高/安積黎明高 ]
日本の高校合唱界では、ゴールデン・トライアングルだ。
始まりは、第47回大会[平成6年/1994年]からである。
相互の個性と実力を良く理解し合い、良好な人間関係と音楽が、現在まで継続している。
▼自由曲
・曲名だけから受ける第一印象として、【安積黎明Tone=音】にぴったり。
・入りの音取りで、ピアノが【6つの音】を【2回】奏でたので、
「お?、最初から6声Divか?」 凄い!
安積黎明レベルでも、課題曲終了後、自由曲の調性を確認するために2回、入りの音を確認するんだ?」と思ったのであるが、よく聞き分けると同一と思われた【6つの音】は、一部重複する音もあるが、実は微妙に相違があった。
つまり、2群合唱用に音取りして、いきなり8声?10声位にDivしているようだ。
・冒頭、弱音のヴォカリーズから始まり、すぐにグラス・ハープ[glass harp]が入る。
恐らく、グラス・ハープであると思われるが。
・このグラス・ハープの活用が、大きな効果を生んでいる。
・入りの音がわずかにずれただけで、他にマイナス要素が見つからない。
・幻想的な雰囲気、鋭いタッチで場面転換が明快なピアノ伴奏、緊張感ある和声の連続、トレーニングされたぶれない発声が、真っすぐ飛んで良く響く。
決して攻撃的ではない。
・声楽でありながら、まるで器楽を聴いているようで、奏者の巧みな歌唱技術に驚く。
・縦線、横線共に隙がなく、聴き手を圧倒する演奏。
・楽曲が持つエネルギーが大きなことも要因であろう。
・声の純度が大変高く、それによる透明感が群を抜いている。
・2週間前のNHKコンクール時の演奏は、やや声の純度が落ちたかなあと感じたが、朝日コンクールでは、見事に化けている。
自由曲は《梟月図》から「青」を、力みなく、さらっと、いとも簡単に歌い切る技術と感性は相変わらず秀逸。
▼私が勘違いしていた。
「青」ではなく、二群の無伴奏女声合唱のための「幻の風・光の海」から 1st Sceneであった。
NO NAMEさんからのご指摘で追記する。
単に、課題曲:『あの空へ~青のジャンプ~』が、安積黎明の演奏姿勢や【声】にそぐわなかっただけであろう。
課題曲と自由曲を通して聴いた後、完成度が高いなあと感じた。
鈴木氏の独特な音楽観が、くっきりはっきりと【音】として具現化している。
鈴木作品の作風や曲調が好きな方とそうではない方に二分化されるであろうが、こういった楽曲は、合唱界では【尖った位置】に存在していると感じているので、興味深い。
難易度が大変高いと思われる今回の新曲は、作曲家が意図した狙い通りに表現できる団体、挑戦する団体は少ないであろうなあ。
現在の高校合唱界においては、橘高校、葵高校、武庫川女子大学附属高等学校、星野高等学校などに限られるかもしれない。
妖精の距離[昭和12年/1937年]
うつくしい歯は樹がくれに歌った
形のいい耳は雲間にあった
玉虫色の爪は水にまじった
脱ぎすてた小石
すべてが足跡のように
そよ風さえ
傾いた椅子の中に失われた
麦畑の中の扉の発狂
空気のラビリンス
そこには一枚のカードもない
そこには一つのコップもない
欲望の楽器のように
ひとすじの奇妙な線で貫かれていた
それは辛うじて小鳥の表情に似ていた
それは死の浮標のように
春の風に棲まるだろう
それは辛うじて小鳥の均衡に似ていた
▼楽曲はここで終了している/時間制限によるコンクール・カット版であろうか
詩は形を持たぬ
という頑なな認識があり、私を捉えてはなさない。
書いているときの
ペンや鉛筆が紙を擦っているが、
これはこれで別の何かの仕事なのか?
言葉は処えらばず
遣って来て、掠めて去る。
私はおんなの名を呼びたいと思うとき
のように、その名を探している。
瀧口修造[1903−1979]
詩人、美術評論家。
1930年、日本で最初のシュール・レアリスムの文献、アンドレ・ブルトンの『超現実主義と絵画』を翻訳。
その後フランスの現代詩、美術を研究し(特に超現実主義)日本に紹介。
前衛的な現代芸術の発展に主要な役割を果たしたそうだ。
シュール・レアリスムとは何?
シュルレアリスム(フランス語: Surrealisme/スュレアリスム)は芸術の形態、主張の一つ。
超現実主義ともいう。超現実とは「現実を超越した非現実」という意味に誤解されがちであるが、実際は「過剰なまでに現実」というような意味。[wikipedia から転載]
凡人な私は、詩の内容が、ほとんど理解不能。
悲観はしていないが、理解できる感性や教養が足りなさすぎる。
安女ファンでもある私は、気分転換をしたい時に、
福島県立安積女子高等学校合唱団第1集[1980-1989]昭和55年−平成元年
福島県立安積女子高等学校合唱団第2集[1990-2000]平成2年−平成12年
を聴いている。
オタク的な趣向に、ちと気持ち悪いと思われるであろうなあ。
30年連続金賞受賞という快挙、文部科学大臣奨励賞も5年ぶり(前回:平成16年/2004年)に受賞。
凄すぎる! 恐るべし! の感想に尽きる。
[wikipedia から抜粋]
1980年から2008年の29年連続(継続中)で金賞を受賞
そのうち第1位の合唱団に与えられる文部科学大臣奨励賞を通算22回受賞
▼課題曲:女声合唱組曲《遙かな歩み》から「機織る星」
詩:村上博子 曲:高田三郎
指揮:星英一 ピアノ:鈴木あずさ
▼自由曲:女声合唱とピアノのための組曲《妖精の距離》から「妖精の距離」
詩:瀧口修造 曲:鈴木輝昭
指揮:星英一 ピアノ:鈴木あずさ
コンクールを鑑賞していないが、音源を入手することができた。
[ 作曲家 ⇔ 指揮者 ⇔ 演奏者 ]
[ 鈴木輝昭氏 ⇔ 菅野正美氏/星英一氏 ⇔ 安積女子高/安積黎明高 ]
日本の高校合唱界では、ゴールデン・トライアングルだ。
始まりは、第47回大会[平成6年/1994年]からである。
相互の個性と実力を良く理解し合い、良好な人間関係と音楽が、現在まで継続している。
▼自由曲
・曲名だけから受ける第一印象として、【安積黎明Tone=音】にぴったり。
・入りの音取りで、ピアノが【6つの音】を【2回】奏でたので、
「お?、最初から6声Divか?」 凄い!
安積黎明レベルでも、課題曲終了後、自由曲の調性を確認するために2回、入りの音を確認するんだ?」と思ったのであるが、よく聞き分けると同一と思われた【6つの音】は、一部重複する音もあるが、実は微妙に相違があった。
つまり、2群合唱用に音取りして、いきなり8声?10声位にDivしているようだ。
・冒頭、弱音のヴォカリーズから始まり、すぐにグラス・ハープ[glass harp]が入る。
恐らく、グラス・ハープであると思われるが。
・このグラス・ハープの活用が、大きな効果を生んでいる。
・入りの音がわずかにずれただけで、他にマイナス要素が見つからない。
・幻想的な雰囲気、鋭いタッチで場面転換が明快なピアノ伴奏、緊張感ある和声の連続、トレーニングされたぶれない発声が、真っすぐ飛んで良く響く。
決して攻撃的ではない。
・声楽でありながら、まるで器楽を聴いているようで、奏者の巧みな歌唱技術に驚く。
・縦線、横線共に隙がなく、聴き手を圧倒する演奏。
・楽曲が持つエネルギーが大きなことも要因であろう。
・声の純度が大変高く、それによる透明感が群を抜いている。
・2週間前のNHKコンクール時の演奏は、やや声の純度が落ちたかなあと感じたが、朝日コンクールでは、見事に化けている。
自由曲は《梟月図》から「青」を、力みなく、さらっと、いとも簡単に歌い切る技術と感性は相変わらず秀逸。
▼私が勘違いしていた。
「青」ではなく、二群の無伴奏女声合唱のための「幻の風・光の海」から 1st Sceneであった。
NO NAMEさんからのご指摘で追記する。
単に、課題曲:『あの空へ~青のジャンプ~』が、安積黎明の演奏姿勢や【声】にそぐわなかっただけであろう。
課題曲と自由曲を通して聴いた後、完成度が高いなあと感じた。
鈴木氏の独特な音楽観が、くっきりはっきりと【音】として具現化している。
鈴木作品の作風や曲調が好きな方とそうではない方に二分化されるであろうが、こういった楽曲は、合唱界では【尖った位置】に存在していると感じているので、興味深い。
難易度が大変高いと思われる今回の新曲は、作曲家が意図した狙い通りに表現できる団体、挑戦する団体は少ないであろうなあ。
現在の高校合唱界においては、橘高校、葵高校、武庫川女子大学附属高等学校、星野高等学校などに限られるかもしれない。
妖精の距離[昭和12年/1937年]
うつくしい歯は樹がくれに歌った
形のいい耳は雲間にあった
玉虫色の爪は水にまじった
脱ぎすてた小石
すべてが足跡のように
そよ風さえ
傾いた椅子の中に失われた
麦畑の中の扉の発狂
空気のラビリンス
そこには一枚のカードもない
そこには一つのコップもない
欲望の楽器のように
ひとすじの奇妙な線で貫かれていた
それは辛うじて小鳥の表情に似ていた
それは死の浮標のように
春の風に棲まるだろう
それは辛うじて小鳥の均衡に似ていた
▼楽曲はここで終了している/時間制限によるコンクール・カット版であろうか
詩は形を持たぬ
という頑なな認識があり、私を捉えてはなさない。
書いているときの
ペンや鉛筆が紙を擦っているが、
これはこれで別の何かの仕事なのか?
言葉は処えらばず
遣って来て、掠めて去る。
私はおんなの名を呼びたいと思うとき
のように、その名を探している。
瀧口修造[1903−1979]
詩人、美術評論家。
1930年、日本で最初のシュール・レアリスムの文献、アンドレ・ブルトンの『超現実主義と絵画』を翻訳。
その後フランスの現代詩、美術を研究し(特に超現実主義)日本に紹介。
前衛的な現代芸術の発展に主要な役割を果たしたそうだ。
シュール・レアリスムとは何?
シュルレアリスム(フランス語: Surrealisme/スュレアリスム)は芸術の形態、主張の一つ。
超現実主義ともいう。超現実とは「現実を超越した非現実」という意味に誤解されがちであるが、実際は「過剰なまでに現実」というような意味。[wikipedia から転載]
凡人な私は、詩の内容が、ほとんど理解不能。
悲観はしていないが、理解できる感性や教養が足りなさすぎる。
安女ファンでもある私は、気分転換をしたい時に、
福島県立安積女子高等学校合唱団第1集[1980-1989]昭和55年−平成元年
福島県立安積女子高等学校合唱団第2集[1990-2000]平成2年−平成12年
を聴いている。
オタク的な趣向に、ちと気持ち悪いと思われるであろうなあ。
NHKの自由曲に「青」とありますが、それは数年前の自由曲だったはずです。
今年の自由曲はタイトルを私自身失念してしまいましたが、おそらく「青」ではないでしょう。
はじめてブログを閲覧させていただきましたが、とても合唱がすきなのですね。
これからも更新頑張ってください。
失礼いたしました
by NO NAME (2009-10-30 04:26)
ご指摘いただきまして、ありがとうございました。
早速、追記しました。
今年の真栄中学校の「青」、出雲一中の「青」などとごちゃ混ぜになり、勘違いをした次第です。
by malechoirpopeye (2009-10-30 19:38)
瀧口修造といえば、武満徹作曲による男声六重唱曲「手づくり諺」を思い浮かべる男声合唱人も少なくないでしょうね。
テクストが原詩でなく英訳だったり、男声六重唱といいつつ6パートのうち2パートがアルト(実際はカウンターテノール)だったりというハードルがあるものの、そこそこ再演されています。
慶應義塾ワグネルソサイェティー男声合唱団の公式サイトで、法政大学アリオンコールが東京六連にて取り上げた実演が聴けます。あと、権利的にムニャムニャぽいですが、海外の某合唱団による演奏のエアチェック音源らしきものがYouTubeにあります。
原詩は「妖精の距離」よりは取っ付きやすいと思います。
by せき (2009-11-03 02:15)